救える命があれば どこへでも

熊本地震緊急医療支援活動

平成28年熊本地震 被災地益城町での緊急医療支援  -AMDA兵庫 副理事長 鈴記 好博-


平成28年4月14日最大震度7の地震が熊本を襲いました。

AMDA本部はその翌日に益城町に入ったので、先陣隊は4月16日深夜の本震震度7を益城町で経験しています。本部からの第4次隊として熊本入り要請の連絡が入り、私は4月20日から1週間、益城町広安小学校避難所に医師として活動させてもらいました。広安小学校には、校舎内に300人、運動場に500人(車中泊)の方が避難されており、電気は復旧されていましたが、ガス、水道の使用ができない状態が続いておりました。

発災からすでに1週間のこの時期の医療支援の状況としては、超緊急的災害救急医療支援のD-MATが現場から離れ、全国の医師会が構成するD-MATに引き継がれている頃で、多くの医療支援団体の活動も益城町医療本部で統括一本化された時期であります。AMDAの活動場所も、この本部から任される形で広安小の避難所を引き続き守っていくということになっていました。

すでに24時間体制で救護所運営をやっていた広安小学校での活動でしたが、発災2週間目は、1日40~50名程度の受診者で、救急外傷の患者さまは全くいなくなっており、呼吸器感染症、避難が長期化していることでの腰痛、肩こりなどの症状、不安、不眠などの震災後ストレス性疾患の患者さまが増加していました。インフルエンザBの罹患者が一名でましたが、隔離することで蔓延は防止でき、ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の発生も見ることはありませんでした。

また、J-MATの方たちと協力しての避難所内回診を行い、エコノミークラス症候群予防のための声かけ、リスク者への弾性ストッキング配布を行いました。

救護所活動に加え、このフェーズで避難所に入った我々のチームは、「弱者にやさしい避難所作り」と「感染予防対策」を進めていきました。

「弱者にやさしい避難所作り」として、自衛隊設置のポータブルトイレ(800人に17基)の一部を女性専用とし、さらにこのポータブルトイレ(和式)では用が足せない足の不自由な方、子供さんたちが使用できる簡易型洋式トイレ「タッチポン」の導入、足腰の弱いご高齢者が寝た状態から起き上がりやすくして体の弱りを予防するための簡易ベッド(段ボールベッドなど)の導入、少しずつ再開し始めた街の開業医さんの情報を避難者の方々に向けて発信、授乳室やおむつ交換室の設置などを行いました。

無題 無題2

「感染予防対策」としては、トイレ清掃指導、トイレ、避難室前への消毒薬設置、ポスター、声かけなどによる感染予防啓もう活動を行い、ノロウイルス感染アウトブレーク時のマニュアル作成を手がけました。

また、夜間の避難所見回り、避難所内土足禁止の開始、赤ちゃんの沐浴や避難者の方々の足湯の開始、総合グランドにできた避難テント村の救護室設置の準備などもやらせていただきました。

正直、行政の地震後対策が後手後手となっている感は否めず、明らかに「予想してなかった地震」への「準備不足」が見て取れる状況でありました。

今後来ると予想される東海、南海トラフ大地震は、この熊本地震および阪神淡路大震災とは異なり、津波の被害が中心となる東日本大震災型の災害であると思われます。

これまでの教訓を生かすことができるように個人個人が自分を守るために準備することはもちろん、考えられる状況に対し行政、自衛隊、NPOが協力して具体的に準備をしていくことが重要で、今AMDA本部はそういう形の準備を行っているところであり、その会議にはAMDA兵庫の一員として私も参加させていただきお手伝いさせていただいております。

無題3前列左 鈴記氏