救える命があれば どこへでも

福島県いわき市と福島第二原発への視察

 

福島県いわき市と福島第二原発への視察 〜AMDA兵庫とAMDA神女クラブとの合同プロジェクト〜

AMDA兵庫理事長 江口貴博

 

阪神淡路大震災時に日本全国や世界各国から頂いた支援へのお礼をしようと1998年2月に発足したAMDA兵庫も昨年20周年を迎えることができました。最初の10年は、震災被災地からの寄付でできたAMDAネパール子ども病院への技術支援をしながら支援への感謝の気持ちを世界に発信するとともに、震災で亡くなられた方々への慰霊を行うことを目標とし、ネパール子ども病院の10周年記念式典にはネパールの地で宗派を超えた合同慰霊祭を執り行いました。次の10年は、日本とネパールの病気の子ども達へのメンタルケアとして、日本クリニクラウン協会と合同でピエロを病院に派遣し笑顔で溢れる病院を目指しながら、日本国内では東日本大震災や熊本地震、西日本豪雨災害などで、医師や看護師、保健師や薬剤師らを派遣して慰問を行い、阪神淡路大震災からの復興へのお礼の気持ちを日本全国に伝えてきました。

そして、昨年新たな10年のスタートを切りましたが、次の10年は近い将来来るであろう南海トラフの地震災害などへの備えをしながら、次世代の育成に力を入れていくことを目標に掲げることとしました。

特にここ数年、兵庫県下で共に活動する神戸女子大学のAMDA神女クラブと、様々なイベントなどで行動を共にしてきました。その最初の大きな合同プロジェクトは、2年前の夏に催行した宮城県石巻市雄勝町への慰問活動でした。今回それに続く第2弾として、原発事故の影響で東日本大震災からの復興が最も遅れていると言われる福島県を共に訪ねることを企画しました。

AMDA神女クラブの看護学科の学生達11人は8月26日夜に大阪を出発し夜行バスでいわき市を目指しました。当直明けの江口とAMDA中高生会の副リーダーだった江口の長男、そして引率のAMDA兵庫のメンバー3名は8月27日早朝便で空路福島を目指し、総勢16名で、8月27日、28日と福島県いわき市を訪ねました。27日午前はいわき市合同庁舎で防災担当者の方々に復興状況を伺い、午後は福島第一原発のあった双葉町の町役場を訪ねて、当時の全町避難の様子と現在の避難者の状況を伺いました。夕方は塩屋埼周辺の地区をバスで視察しながら同乗した語り部の方から被災当時の様子と復興の様子を伺いました。その夜は、看護学生らは復興に尽力している民宿「鈴亀」で宿泊し、二人三脚で復興に尽力したご夫婦から当時の様子とともに復興に向けてどう行動したかを確認できたようです。翌28日午前は廃炉の決まった福島第二原発を訪ね、第一原発同様に津波を受けながらも30時間で電源復旧とモーターの交換を行い、間一髪で冷却再開を果たした当時の様子を伺いました。その後、福島第二原発の原子炉の中までご案内頂いたことで、炉心溶融をきたした第一原発の現在の状況がよくわかりました。昼は原発の資材置き場として活躍しその後再開したJビレッジで昼食後、楢葉町の遠隔技術開発センターを訪ね、第一原発の放射能デブリを取り除くためのロボット開発の進捗状況を伺った後、夕方空路で大阪に帰り、江口は奈良の重度障害者施設での当直に入りました。視察前後は大抵当直で、今回も3泊4日の旅でした。看護学生達も江口の子供も、特にテーマは与えず、まず知ることから始めようと臨んだ今回の視察、今後福島のために各々が考え、何か行動を起こしてくれることを期待しています。

AMDA兵庫はAMDAの一員として、「救える命があればどこへでも」の精神を次の世代へと繋いでいきたいと思っています。今後ともご支援下さいますようどうぞよろしくお願いいたします。

 
いわき市の皆さんと                        語り部さんからお話を聞く

 
東京電力、福島第二原発にて                 楢葉町の遠隔技術開発センター

 
福島第二原発 原子炉内視察                 福島第二原発 津波に浸かった冷却装置の説明

 

【参加者の感想文】

部長 宇都宮舞珠 看護学部3年

私は前回の東北支援事業にも参加していたため、2年前と比較しながら福島を見学することができました。比較することで、地域の特徴によって取り組む課題が大きく異なることを学びました。今回の見学では、原発事故による課題が8年経った今でも残っていることが特に印象的でした。今回の学びを活かし、まずは、現在生活している地域に合わせた災害の予測や、その対処を自分なりに考えていきたいです。今回の活動ではたくさんの方からご支援をいただきました。活動で得た学びから、看護学生としてできることを考え、実践していきます。本当にありがとうございました。

副部長 諫山千実 看護学部3年

福島県を訪れたのは今回が初めてでした。当時の被災状況や現在の復興状況についての話を伺うことや実際に見て回ることで、発災から8年が経った福島県の姿について知ることができました。復興が進み、家や商業施設、道路等が整備された町がある反面、帰ることのできない町やまだ癒えない心の傷があることを学びました。近年、大規模な自然災害が相次いでおり、防災教育に対する関心も高まっています。しかし、私たちは災害を実際に経験したことがありません。今回の活動を通して学んだことを踏まえ、災害の恐ろしさについて知ると同時に、災害に負けない知識や私たちにできることについて考えていきたいと思いました。

福永里絵 看護学部1年

私は今回初めて福島に行き、そして初めてこの目で被災地の現状を見学することができました。堤防や防災緑地などの今後の災害への対策が進む中で、被災者の心のケアや風評被害など、まだまだ復興への課題が多くあることも学びました。実際に目で見て話を聞くことで貴重な発見ができ、災害が多い日本のこれからについて考える非常に良い機会となりました。ありがとうございました。

川淵紫苑 看護学部2年

今までテレビや画像でしか被災地について見たことがありませんでした。今回、実際に被災地を見学させて頂いたことで震災の悲惨さや被災した方々の苦しみ、復興することの難しさなど様々なことについて学ぶことができました。いつ起こるのかわからない震災にどう備えるのか、被災地に対して自分ができることは何かいま一度よく考えなおしていきたいと思います。

流石 茅都利 看護学部1年

私は被災地を訪れたのは2度目でした。震災から3年後に旅行に東方に訪れたときとは、街の雰囲気や人々の様子が変化していて、新しい東北を作り出そうとしている段階なののだと感じました。実際に被害に遭われた方ほお話を聞くことができ、日頃からの備えの大切さを感じました。
貴重な経験をさせていただき本当にありがとうございました。

早瀬歩美 看護学部1年

この度は私たちのために福島視察に関する様々なご支援をいただきまして本当にありがとうございました。実際に現地に足を運ぶことで、今の福島の状況や復興にはまだまだ時間がかかることなどそこでしか見えないことが沢山あり、震災から8年が経った福島のこれからの課題を学ぶことができました。今回学んだことを今後の活動にも生かしたいと思います。本当にありがとうございました。

里中美来 看護学部2年

私は被災地にも福島県にも初めて行きましたが、今回、本当にいい経験となりました。本当にありがとうございました。
被災した方々の体験記というのは実際に直接の関わりを通して話を聞かないと伝わらないものがあると感じました。そして、震災はいつ、どこで起こるか予測不可能なため、他人事ではなく、日頃から身近な人と交流をし、備えておく必要があると感じました。「自分の命は自分で守る」という言葉を大切に震災時の行動について考えていきたいと思いました。
震災を経験した地域だけが、経験を生かした対策をするのではなく、他の地域にも広めて行くということが今後の課題であるとも感じました。

神牧沙也加 看護学部3年

私は初めて福島県に行きました。被災地を実際に見たり当時の話を聞くことができ、震災の悲惨さや現在の状況などを知ることができました。復興している所もありますがまだまだ問題点も沢山あることを知りました。この経験を通して私たちが現在何ができるのか考えて行きたいと思いました。

原田小雪 看護学部1年

今回、福島復興見学プログラムに参加させて頂くにあたって、本当に多くのことを感じ、学びました。恥ずかしながら、今までは復興や支援と聞くと、物資や労力などが主になると勝手に思っていました。しかし今では、時間や自分の目で見て感じること、それらを伝えることなども大事な要素になるのだと思うことができました。多くの人と出会い、たくさんのお話を聞くことが出来て、大変貴重な体験をさせていただきました。本当にありがとうございました。

上野瑛梨奈 看護学部2年

この度、東日本大震災の被災地である福島県の視察によって、改めて被災するという体験を知ることができました。
役場や原発見学を通して、津波の被害に原発事故が重なったことで、阪神淡路大震災から神戸が復興を遂げた時よりも、復興にかかる時間は長いであろうということ知り、また放射能による危険から身を守るために、故郷に帰ることを未だ叶えることが出来ずにいる被災者の思いを考えると、遣る瀬無い気持ちになりました。
また逆に、被災者との交流を通して、被災してより辛いという思い以上に、立ち直ることが義務だと感じ、ひたすらに前に進む努力をしてきたというお話を聞きました。この言葉から、被災する体験がただ単に、辛いという負の感情だけを生み出すのではなく、そこから乗り越えようと歩み出す強い力を、被災者が持っていたことを知りました。
私が知ることのできた”被災するという体験”は、ほんの一部分に過ぎないのかもしれません。しかし、今回学ぶことのできた事柄はどれもとても大切だと感じます。私は今回の視察で得た学びから、被災することについて、今後も継続して自分なりに考察し、理解しようとすること。そして理解を深めた上で、福島県やその被災者のためになるような、また新たな災害が起こったときの被災地や被災者に良い影響を与えられるようなアクションを起こしていく必要があると思いました。
最後に、今回このような体験を与えてくださった方々に感謝致します。ありがとうございました。

竹本愛彩 看護学部3年

わたしは今回初めて被災地に行き、自分の目で被害や復興の状況を見ることが出来ました。震災からは8年が経ち、新たな住居や防災のための施設がどんどん作られているのが分かりました。しかし、未だに原発の問題や被災した方達の心の問題や産業の復興などまだまだ課題が残っているということも感じました。わたしはまだ大きな災害を経験したことがありません。そのため、今まで具体的なイメージを持つことが難しかったですが、今回の体験を通してより防災の意識が高めることが出来ました。また、家に帰ってから家族と体験の話をして、もし災害が起こった時にどう動けばいいのかを改めて考える機会にもなりました。今後も自分の命を自分で守るためになにができるのかを考えて、いつか必ず起こる災害に備えていきたいと思いました。今回はとても貴重な体験に参加させていただき本当にありがとうございました。

江口優人 元AMDA中高生会副リーダー

今回福島に行った目的は、福島第一原発事故の正しい情報を直接知ることで、これから何ができるかを考えることでした。そして、福島の農作物の線量基準はとても厳しく安全であることを知りました。ただ、その風評被害は簡単に払拭できるものでは無い事もわかりました。今回の
経験を通して、噂に流されず自分で考える力が大切で、この経験をSNSなどで発信し、AMDA中高生会の人たちにも伝えていこうと思います。非常に貴重な経験をさせて頂きありがとうございました。