救える命があれば どこへでも

理事長あいさつ

2024年11月吉日

「阪神淡路大震災へのご支援への感謝を胸に」

AMDA兵庫は、阪神淡路大震災後の兵庫県で、1998年2月1日に活動を開始しました。一番の活動の柱は、阪神淡路大震災の時に日本全国や世界各国から頂いた支援へのお礼をしようと構想されたAMDAネパール子ども病院(SCWH:シッダールタ・チルドレン・アンド・ウーマン・ホスピタル)の建設及び医療支援を行う事でした。その病院を最初に構想したのは、1993年にAMDAのブータン難民支援のためネパールで活動された篠原明先生でした。彼は悪性リンパ腫の病魔と戦いながら最期までネパール子ども病院建設に尽力されましたが、1996年11月夢半ばで亡くなられました。その夢を受け継いだのが、初代AMDA兵庫の連利博代表と現理事長の江口貴博でした。ネパール子ども病院は1998年11月2日に小児外来部門からスタートし、建築には安藤忠雄氏がボランティアで携わって下さいました。翌年には救急及び入院部門を立ち上げ、産婦人科も開始しました。50床で開始した最初の本棟はすぐに手狭となったため、2003年には小児病棟を増築、「篠原記念病棟」と名付けました。また、2013年には3つの手術室と新生児ICUを備えた産科病棟を追加、また遠方から訪れる患者家族の負担を減らすため、2014年にAMDA兵庫が主体となって宿泊や食堂を備えた患者家族棟も整備しました。結果、2023年末時点で、のべ95万人の母子が病院を訪ねて、6万5千人の新生児が誕生、ネパール国の乳幼児死亡率は3分の1以下となりました。2023年6月にはネパールから病院長やブトワール市長など6名がAMDA本部及び神戸市を表敬訪問し、300床への増床や子ども図書館の建設、NPO医療大学の構想なども話し合われ、さらに多くの命を救うべく新たなスタートを切ったところです。

また、AMDA兵庫の立ち上げに当たって、あと2つの活動の柱を立てました。その一つは、在日外国人に対する医療通訳支援です。阪神淡路大震災の時に神戸で被災した多くの外国人が言語の壁のために十分な医療支援ができなかった事をきっかけに、医療通訳者の必要性を感じ、AMDA兵庫の語学が得意な人が中心となって医療通訳セミナーを開催、2003年には村松氏が代表となって医療通訳研究会として独立、現在では英語のみならず、スペイン語、ポルトガル語、ネパール語など多言語のセミナーを開催しております。

3つ目の柱は、世界の小児医療を見つめた時に、日本でも小児のメンタルケアが十分では無いという危機感からでした。そこで、連代表と江口が中心となって、小児ガンの家族会とともに長期に入院する小児の元にピエロを派遣する事業を構想、2003年日本クリニクラウン協会の立ち上げに尽力しました。現在でも連前代表が同会の副理事長として活動を継続しており、小児のメンタルケアの向上に貢献しています。2010年には、日本のクリニクラウンとともにAMDAネパール子ども病院を訪問し、メンタルケアの実践とともにその必要性を伝えたところ、スタッフが壁にアニメを描いたり、看護学生らによる手作りのおもちゃ作りなどが始まりました。将来は、ネパール人によるクリニクラウン活動ができる方向で準備が進んでいます。

また、2011年3月11日に発生した東日本大震災では、発災翌日に小倉筆頭理事及び鈴記副理事長を現地に派遣、その後もAMDA本部の活動に呼応し、岩手県釜石市と大槌町に医師や看護師、薬剤師などを派遣し、避難所での医療支援活動を行いました。また、翌年、小倉医師が宮城県雄勝町の仮説診療所所長となったことをきっかけに数年に渡って仮設住宅への慰問活動なども行いました。この活動をきっかけに、熊本地震、ネパール大地震、西日本豪雨災害など、多くの被災地に医師や看護師などを派遣、最近では2024年7月、風に立つライオン基金とコラボし、能登半島地震被災地である輪島市仮設住宅の慰問活動にも参加しました。

また、近い将来起こるとされている南海トラフ津波災害への準備として、AMDA本部が主催する南海トラフ地震災害プラットフォームに参加、諏訪中央病院とともに徳島県阿南市の避難所運営を担当する事となり、5年に渡って阿南市の防災訓練にも参加し、トリアージの実践や医療活動のデモンストレーションなどを通じて市民への啓発活動を行い、同時に市の災害担当職員や現地の医師会とも交流を深めております。

このように、ネパール子ども病院については26年、災害医療支援については13年の経験を積んできましたが、最近力を入れているのが、次世代の育成です。今年2月には、AMDA神女クラブ(神戸女子大学)の看護学生2人と江口理事長及び中川副理事長の娘、中学生2人の計4名でAMDAネパール子ども病院を訪ね、研修を積みました。今後も大学生や中高生の現地視察事業を展開する予定です。また、災害医療支援についても、南海トラフ災害への対応で、災害調整員と学生ボランティアの育成を目指しています。コロナ禍をきっかけに屋外での活動を強化、AMDA神女クラブの看護学生や中高生、大学生とともに兵庫県加東市の播磨路芸術のモリでの防災山キャンプ、徳島県松茂町の月見ヶ丘の浜を守る会とともに防災海キャンプを行い、火起こし訓練や薪を使った炊き出し訓練などを行うとともに、地域住民との交流を行いながら、次世代の防災力向上に努めています。

来年、阪神淡路大震災から30年を迎えますが、私たちAMDA兵庫は、阪神淡路大震災やネパール医療支援、多くの被災地で得た教訓を次世代に受け継ぎ、ネパール子ども病院のさらなる発展と、南海トラフ津波災害などへの将来の減災に繋げられるようにこれからも活動を続けて行きます。今後ともご支援くださいますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

AMDA兵庫理事長
江口貴博